孤独死・自死

葬儀実践

自死

初めに伝えおきたい事として、自死(自殺)の大半は突発性、続発性問わず正常な精神状態ではありませんから身体を拘束こうそくでもしない限り止められません。依って家族が止められなかった事を後悔したり、自分を責める必要はありません。

縊首いしゅ(首吊り)・飛降り・薬物・溺死・ガスなど様々な手段の中で一番多いのが首吊り、高所にロープを吊り下げるイメージですが実際はドアノブに紐やロープが多いです。

ドアノブの高さで死ねるの? と思われて当然、僕もそう思いましたが死ぬ事を目的とした人なら高さは関係ないらしい、ゆえに24時間監視してない限り静止できないと書いたのです。ただ高所から吊り下がるより鬱血うっけつは少ないです。

姉の旦那が自死

義兄(姉の夫)が30代半ば、僕は美容室に材料を卸す営業をしてた20代後半、会社からポケベルに連絡があり「すぐにお姉さんに電話してください」と言われ連絡すると電話に出た姉の第一声は「〇〇君、死んじゃった」でした。

意味が分からず、落ち着かせながら聞くと義兄から姉に「もう駄目だ」との電話『まずい!』と思い「すぐに行くから待ってて!」と急いで自宅に戻ったけど間に合わず、自社工場の人達の手を借りて鴨居かもいから降ろしたそうです。

顔色を聞くと赤紫だと言うので警察に電話するよう伝え、アザが隠せるファンデーションを手配して駆けつけました。警察介入(捜査一課)の検視で数時間後、赤紫色に鬱血した顔、くっきり痕の着いた首にもファンデーションを塗った記憶があります。

葬儀支援を始めてから数名の首吊り死体を見ましたが義兄よりひどい死体はありません。義兄は事業に失敗した事による自死でしたが、姉から聞かされた話しの流れから『自殺は防げない』との現実を見せられ理解に至ったのです。

自殺は家族に消える事の無い衝撃を与える終幕であること、孤独死は顔すら見られない凄惨な終幕も珍しく無く家族に与える衝撃も同様ですから、家族への想いが少しであったら「自殺」と「孤独死」は可能な限り避けて欲しい人生の閉じ方である事を知って欲しくて書いてます。

自殺で生命保険金は支給されない

当時は完全会員制でなく、知り合いの紹介で来られた女性の旦那が日光で事故死され、近隣の警察署の冷蔵庫で安置されてるとの相談から2日後のお迎えでした。

高速道路を利用して1時間30分、指示された日時に警察署に到着、暫く待たされてる途中で刑事さんから「今日は3件あってお待たせしてすみません」と言われ、100m以上の崖から身を投げ死体はかなり傷んでいると説明を受けると更に待機です。

暫くするとカーテンの中から「ちょっと良いですか?」と言われたが、普通の死体ではないと分かってたので、千明と息子に「僕が入るから外で待ってて」と伝えて入ると頭部は欠け、血液と体液が溜まり、髪の毛が入った袋はウジ虫が動いていたから凄惨な死体があったはず、、、

ステンレス台のゴムシートに横たわった死体、ゴムシートも持ち帰って良いと言われたので、一旦死体を包んで2人を呼び、体液が流れで無いないよう両端をガムテープで縛りバナナボートのケーキのような形にしてから納棺した記憶があります。

顔が半分無くなった凄惨な死体、確実に見てるはずだけど記憶に残っていませんから、特殊な状況下だと忘却スイッチでもあるのでしょうか? 署員の方の話しで人は高所から飛び降りると、自己防衛本能が発動して意識を失うと言ってました。

あんしん館に戻っても納棺した棺を開ける事はできず、翌日の火葬で義息子が大きな声で言った「ありがとう!」の声に違和感があったのを覚えてます。

家族達は事故と言ってましたが、死体検案書には「自殺」の文字があったので保険金が支払われたかは定かではありません。ただ生命保険の多くは自殺の場合保険金(注1)が支払われない旨が明記されてますので保険金が出なかった可能性が高いです。

テレビドラマで自殺した保険金で――、という内容もありますが、ドラマはフィクションつくり話しですから、無駄死にもあり得るので軽率な判断と行動は控えましょう。

自殺は保険金が出ない

注1 保険法51条1号は、「被保険者が自殺」したとき、保険会社が保険金を支払う責任を負わないと定めています。

孤独死

毎年1人はいる孤独死、発見が早ければ顔を見ることも出来るが、梅雨とか夏季に1か月2カ月と発見が遅れたら、逢える逢えないのレベルでなく、誰か確認できないほど凄惨な状態も何度となく経験、故人は勿論、家族も大変なので絶対に避けたい終幕です。

公営団地に一人住まいの老女のケースは死後推定2カ月、顔で故人が特定出来ずDNA鑑定で更に1週間火葬出来ませんでしたので、あんしん館に安置しておけず斎場冷蔵庫で10日間ほど安置、火葬後の焼骨も薄茶色に変色した遺骨でした。

この老女の場合、過去に1度近所の人達で相談の上ドアを壊して突入したところ、当人はコタツに入ってイヤホーンでテレビを見てた経験から突入を躊躇ためらった事、隣近所との付き合いも殆ど無かった事が、悲惨な結果に至ったケースです。

独居者同士で連絡を取り合う

独居者がいる以上、孤独死は避けられませんけど逢える状態での発見は可能ですから、自治会、行政、民生委員任せでなく対象者自身が対策する必要があります。

2025年時点の独居老人(65才以上の独居者)は750万人と埼玉県民より多く、周囲、友人、知人の中にも独居者はおられるはず、同じ境遇者の繋がりで助かる命もあれば、もしもの場合でも逢えない状態にはならずに済むはずです。

『おはよう電話担当』は午前8時「おはよう。体調はどうだい」と声を掛けたり、メール送信するのが日課、受信した人は「おはよう。元気です」と返信メールか受け答えをする。

『おやすみ電話担当』は午後8時「戸締りは、火の元は、おやすみ」の電話かメール確認で朝同様に返信、全員から返信があれば心配せず過ごせます。

電話に出ない、メール返信が無いなどの場合の流れを決めておき、所定の流れでも連絡が取れない時の突入条件、或いは全戸合鍵を作製して所定の場所と信頼に足る人物が管理しておき、突入時には警察官、自治会役員なども立ち会えば問題はありません。

部屋の中で怪我や病気を始めとした理由で動けない状態でも助けられる確率は各段に上がり、もしもの時でも最長12時間なら腐敗も抑えられ逢える状態で発見できます。

団地を始め独居老人の多い地域の自治会は検討する価値があるでしょう。

自死・孤独死は余分費用が掛かる

死亡診断書(死体検案書)が無ければ火葬許可証は発行されず、死亡診断書は医師又は歯科医師以外は記入できません。病院や施設で不信感の無い逝去なら死亡診断書は7千円前後+死後処理費用、しかし警察が介入すると死体検案書(書式は同じ)となります。

総合病院に搬送されれば2万円~5万円で済みますが、自宅等での逝去は管轄する警察署が依頼する事になるので死体検案書は3万円~10万円に跳ね上がり、死体が腐敗してれば『ゴム製納体袋費用』など更に費用が掛かります。

公営、民間問わず賃貸住宅で腐敗してた場合、体液が染みた畳や床は全て交換、更に消臭や清掃費用と数十万円~の結構な費用が掛かり家族の負担は増え、周囲は無責任な噂も立てますので金銭面だけでなく精神的な負担も大きくなります。

独居老人800万人時代

ホームぺージに掲載してある2013年NHKテレビ放送画面には、1人暮らしの高齢者(65才)が平成22年(2010年)500万世帯のテロップ、2010年時点で団塊世代が終幕期を迎える2030年代には独居老人800万人時代になると公言しました。

当時の周囲は「何を馬鹿な事を、、」といった印象でしたが、ほぼ想定通りの増加ですから対象者は勿論のこと、別居してる家族も他人事でなく対策を考るべき時代です。

現役世代が増えない限り年金受給者が増えれば支給額が減るのは当然、老人が増えれば介護保険料が上がるのも当然、更に老化で医療費が増えるのも必然、そして老人夫婦だけの世帯で配偶者が終幕を迎えれば独居老人が増えるのも極々当り前のことです。

依って「対象者自身」「対象者家族」「自治会」「民生委員」「行政管轄の支援センター」「行政」「警察」「医療関係」などが連結して動かなければ成らない時代、これが進めば『葬儀支援の道』は自然に切り拓かれるはずです。

綺麗事だけでは済まない

「死」は綺麗事だけでは済まず、自殺、孤独死を無視した対応も意味がありませんので、目を背けず真正面から事実と真実を受け止めた対策を考える時、葬式そのものの抜本的改革が必要となるはず、もう葬式で暴利を得る時代ではないのです。

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