失敗、失敗、また失敗

葬儀実践

失敗、失敗、また失敗

「発酵するガスの威力」

他市総合病院からの依頼、新築中の総合病院は安置室のエアコンが設置されておらず、前日夜に逝去された故人の火葬依頼が入ったのは半日経過してからでした。

腹部にガスが発生する事は知ってましたが、口、鼻、尻など開口部を塞ぐと、お腹が膨らむほど溜まるとは思いもせず太ったご遺体だと思って搬送、翌日火葬だった事もありドライアイスで完全凍結させるより、火葬時間も短縮できる保冷剤と強冷房の安置室で納棺安置。

火葬当日の朝、安置室の部屋に入ると異様な臭いがして棺のフタを開けると、ご遺体が噴き出した血液と吐出物で顔と布団は真っ赤に染まり強烈な異臭、こうなると感染症の可能性もあるので触る事も出来ず車窓を開けたまま斎場まで向かいました。

幸いにも家族親族は無く我々だけの見送りで助かりましたが、もし家族のおられる方ならゴム手で完全防備して顔や頭部をアコールで拭き、棺布団や安定枕を全て交換しなければ故人の顔を見せる事はできませんので時間、労力、費用も大変だったでしょう。

腐敗は曲線で右肩上がり

火葬後、病院に寄り一連の流れを伝え安置状況など聞かせて貰いましたが、病人の世話をする看護師さんも死体の知識は無い事も分かりました。もしかして医師も死体の知識はさほど無いのかもしれないと当方会員の医師や大学教授にも訊ねてみました。

すると全員が「死体の知識は法医学医、解剖医、検視官でも無ければ分からないよ」と言ってましたけど、考えてみれば逝去後は葬儀屋が運んでいくから死体の変化は経験してません。看護師さんは生きてる患者さんの看護が仕事ですから当然と言えば当然なんです。

ようは死後処置が済んだら速やかに搬送、個々の死体に的確な死体保全をするのが我々の仕事、火葬までの時間、故人が穏やかに眠っているような顔で安置するには『死体の知識』と『最善の保全方法』を学ぶ必要があると教えられました。

ただ病院や施設によっては午後5時以降の逝去は翌朝8時頃の死亡診断もあるので、その辺りは家族にしっかり伝え、尚且つ病院や施設にも伝える必要があり実践してるのですが、知識と腐敗した死体を知りませんから的確な処置をしてくれる所は殆どありません。

死体保全最低条件

① 袋氷・保冷剤・ペットボトルに水を入れ凍結した物などを死体腹部に直接当てる。
(何故かタオルを当てたり、肌着の上から当てる所が大半、死体は生きてません)
② 布団(暖をとるものです)は掛けず、せいぜいタオルケット程度にする。
③ 個室なら強冷房、冬季なら窓を開けて外気で部屋を冷やしても良い
(病院・施設はパジャマで歩ける室温だからです)
一度死臭(腐敗臭)が発生したら取り除く事はできません

首のひと皮が剥がれる

ご遺体は口をしっかり閉じてあげれば穏やかな顔になり、血液は身体の下部に集まり、引力でしわも薄く成ったり無くなったりするので逝去当日より翌日のほうが穏やかな顔になります。

病院、施設はエンゼルバンドと呼ばれるゴムであごと頭頂部を挟んで口閉じをするか、タオル等をあごの下に入れて押し上げようとしますが、前者は弾力を失った肌にゴム痕が付き、後者で口は閉じませんので口閉じ専用器具(海外品)を使用してます。

死後硬直するまで首はグラグラしますから、搬送時に故人の頭が揺れないよう後頭部がスッポリ入る安定枕付き搬送シートを使用してます。ただ見方を変えると後頭部を温ため易いとも言え、熱がこもった状態での安置2日間で1度失敗しました。

口を閉じる器具の装着は左右の頸動脈を圧迫するので頭部の血液が下がりきらない状態で器具を装着すると、うっ血状態となり腐敗が速くなる事を知らず、火葬当日の朝、口閉じ器具を外すと首の皮の一部が1枚剥がれたので驚きました。

腐敗臭は出ておらず家族は気づかなかったようですが、前日より顔が黒ずんでたので内心では『ごめん、、、』という思いだったのを思い出します。

後頭部の冷却は大事、、

時々「親父の時は顔が黒ずんでた」と言われる家族もいますが、これは首から上の部位の腐敗によるもの、腹部だけでなく頭部の冷却も大事であると分かり、後頭部がスッポリ入る安定枕なら凹んだ部分にドライアイス2本V字型に置き後頭部を冷やせば良いと分かった。

頭部を冷やす事で顔の黒ずみもなく、口はしっかり閉じた穏やかな顔を家族は見られます。中には頬がほんのり赤味が出る死体もあり、家族からも理由を聞かれますが分かりません。

『口閉じ』と『頭部冷却』は思ってる以上に大事、上記同様「親父の時は口が開いて苦しそうだった」と言われる家族もいますが、葬儀屋のスキル不足でしかありません。但し数か月間とか長期間口を開けたままだった故人は閉じない可能性もあります。

頭の横では意味がない

安定枕だから後頭部を直接冷却できますが、棺付帯の枕では頭部冷却は難しいですから、顔の横にドライアイスを置く葬儀屋もあるでしょうが、結論から言うと殆ど意味はなく見た目だけです。ただ納棺安置なら棺内を冷やすので多少効果はありますけど布団安置なら意味はありません。

見た目を涼しくして使用量を増やし追加加算する手段ですね。必要な物は使えば良いけど実質効果の無い事をして追加するから葬儀屋は胡散臭いと言われるんです。

死亡届出人

我々だけで行った初めての家族葬は高崎市の自宅安置、依頼は喫茶店のマスターで前橋市民でしたが話の流れから親戚だと思い込んでた我々のミスでした。

故人は都民と言われ、高崎で火葬すると5万円ほど掛かりますが、当時の前橋は届出人が市民なら何処の誰でも無料火葬でしたから、自宅葬した後、前橋斎場での火葬を予定して電話予約、喫茶店の経営者ですから前日午後4時過ぎに死亡診断書の記入完了。

前橋市役所に電話すると、今からでは間に合わないのと予約は完了しているから火葬当日の朝でも良いと言われ、翌朝8時30分に市民課に行ったが、最終的には届出人と故人が結びつかず火葬許可証は発行できないが故人は都民でなく高崎市民だと言われた。

すぐに高崎斎場に電話すると本日午後3時火葬なら受けられると言われ、高崎斎場に変更して何とかなりましたが、2025年の今では確実に『アウト!』火葬炉の予定は前日午後3時くらいに決定するので、当日の予約は小さな市以外は受けてくれません。

死亡届出書の決まり

死亡届出人に成れるのは、親族(血族6親等、姻族3親等),同居者,家主,地主,家屋管理人(医院長、施設長も可),土地管理人等,「後見人,保佐人,補助人,任意後見人,任意後見受任者は各原本が必要」以外の人は届出人には成れません。

① 故人の死亡地(病院、施設、自宅など亡くなった場所の所在地役所)
② 故人の本籍地(登録してある本籍地、免許証に記載ありません)
③ 届出人の所在地(上記届出人に成れる人の居住地役所)

火葬場役所に出せない不合理

例えば、下記の家族だったとしたら故人の居住地役所には提出できないという不合理が生じます。

・前橋市民ですが高崎の病院で逝去(高崎市役所)
・故人の本籍地は新潟市(新潟市役所)
・届出人の息子は埼玉県熊谷市民(熊谷市役所)

(高崎市役所)(新潟市役所)(熊谷市役所)の3か所以外は届出できず、火葬は前橋市斎場なら無料なので当然前橋での火葬となります。なんか変でしょ!? 『故人の居住地役所』に届出できれば良いだけの事、、、法改正は難しい? そんなこたぁねぇだろ・・・・

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